「マイナンバーカードを作ったの。」と妻が言った。
「へえ、それで何ができるの?」とエフが聞いた。
「色々だよ。税金や年金、医療や福祉などの手続きが簡単になるし、マイナポイントももらえるし、要するにスマホだけで何でもできるようになるんだって。」
「そうか。便利な時代になったもんだね。」
夫は興味なさそうにテレビを見ていた。
妻はマイナンバーカードを手に持って、スマホでアプリをダウンロードした。
アプリを開くと、マイナンバーカードの裏面にあるICチップをスマホに近づけるよう指示された。
妻は従った。
すると、スマホアプリの画面に自分の顔写真と氏名、住所、生年月日、性別、個人番号が表示された。
「おお、すごいね。これで私の情報が一目瞭然だわ。」
妻は喜んだ。
「ふーん。」とエフは相槌を打った。
妻はスマホの画面を見ていると、下の方に小さく「その他の情報」という項目があることに気づいた。
「あれ?その他の情報って何かしら?」
妻は好奇心からタップした。
すると、スマホの画面に驚くべき情報が次々と表示された。
妻は呆然とした。
自分の知らないところで、こんなにも詳細な情報が収集されていたのか。
しかも、夫や息子の情報まで。
これは便利なカードではなく、恐ろしい監視カードではないか。
妻は怒りと恐怖で震えた。
「どうしたの?顔色が悪いよ。」とエフが心配そうに言った。
「これ見てよ。私たちの情報が全部あるの。こんなに詳しく。これってプライバシーの侵害じゃないの?」と妻はスマホをエフに見せた。
エフはスマホを見て、驚いたような顔をした。
「えっ、本当だ。これはひどいな。こんなこと許されるわけないじゃないか。」
「そうでしょ?私たちは国に監視されてるんだよ。これは訴えなきゃ。」
妻は憤慨した。
「でも、どこに訴えればいいんだろう?国が既にやってることだから、裁判所も警察もダメかもしれないよ。」
エフは困惑した。
「じゃあ、メディアに知らせるしかないわ。テレビや新聞やネットに騒ぎ立てれば、国も動かざるを得なくなるでしょ。」
妻は決意した。
「そうだね。それが一番かもしれないね。」
エフは同意した。
妻はスマホを持って、テレビ局に電話をかけた。
しかし、電話に出たのは自動音声だった。
「お電話ありがとうございます。こちらはNKHです。お客様の個人番号を入力してください。」
妻は驚いた。
「個人番号?何で?」
妻は不審に思ったが、仕方なくスマホの画面から自分の個人番号を入力した。
すると、自動音声が続けて言った。
「お客様の個人番号は1234567890123ですね。ご契約状況を確認します。」
妻はさらに驚いた。
「契約状況?何の契約?」
妻は不安に思ったが、自動音声が続けて言った。
「お客様は現在NKH受信料の未払いがありますね。ご請求金額は10万円です。今すぐお支払いください。お支払い方法はクレジットカードか口座振替です。どちらにしますか?」
妻は呆れた。
「何言ってるの!受信料は払わなくてもいいって法律で決まったじゃない!それに今電話したのは受信料のことじゃなくて、マイナンバーカードの問題なんだけど!」
妻は怒鳴った。
しかし、自動音声は聞く耳を持たなかった。
「お客様、大声で叫ばないでください。それでは通話を終了します。ご協力ありがとうございます。」
自動音声がそう言うと、電話が切れた。
妻は呆然とした。
「信じられない・・・NKHも国とグルだったのね・・・」
妻は絶望した。
エフも同情した。
「残念だったね・・・他のメディアに試してみるか?」
エフは提案した。
妻は頷いた。
「そうね。他のメディアに試してみよう。」
妻はスマホを持って、新聞社に電話をかけた。
しかし、電話に出たのは自動音声だった。
「お電話ありがとうございます。こちらは朝目新聞です。お客様の個人番号を入力してください。」
妻は呆れた。
「またかよ・・・」
妻は仕方なくスマホの画面から自分の個人番号を入力した。
すると、自動音声が続けて言った。
「お客様の個人番号は1234567890123ですね。ご購読状況を確認します。」
妻はさらに呆れた。
「購読状況?」
妻は不快に思ったが、自動音声が続けて言った。
「お客様は現在朝目新聞の購読者ではありませんね。朝目新聞は日本で最も信頼される新聞です。政治や経済、社会や文化などの最新ニュースや深い分析をお届けします。今なら特別キャンペーンで初月無料です。購読を申し込みますか?」
妻は怒った。
「何言ってるの!購読する気もないってば!それに今電話したのは購読のことじゃなくて、マイナンバーカードの問題なんだけど!」
妻は怒鳴った。
しかし、自動音声は聞く耳を持たなかった。
「お客様、大声で叫ばないでください。それでは通話を終了します。ご協力ありがとうございます。」
自動音声がそう言うと、電話が切れた。
妻は呆然とした。
「信じられない・・・朝目新聞も国とグルだったのね・・・」
妻は絶望した。
エフも同情した。
「残念だったね・・・他のメディアに試してみるか?」
エフは提案した。
妻は首を振った。
「もういいわ。他のメディアも同じだと思う。どこも国の言いなりになってるんだから。」
妻は諦めた。
「じゃあ、どうするの?このまま国に監視され続けるの?」
エフは不安になった。
「そうね・・・でも、私達にできることなんてないわ。国に逆らえるほど強くないし、逃げる場所もないし・・・」
妻は無力感に苛まれた。
「そうか・・・じゃあ、これからは何も言わないで、何も考えないで、何も感じないで生きていくしかないのね・・・」
妻は涙を流した。
エフは妻を抱きしめた。
二人して悲しみに沈んだ。
その時、スマホが鳴った。
妻はスマホを見て、驚いた。
「えっ、これ何?」
妻はエフにスマホを見せた。
スマホの画面には、次のように表示されていた。
「おめでとうございます!あなたはマイナンバーカードの問題に気づくことができました!これは国が行っている社会実験の一環です。実際にはマイナンバーカードには個人情報が入っておらず、プライバシーの侵害もありません。この実験は国民の自由意志や批判精神を測る目的で行われました。あなたは見事に合格しました!ご協力ありがとうございます!」
妻とエフは呆然とした。
「これって・・・冗談?」
妻が呟いた。
すると、スマホから声が再生された。
「冗談ではありません。これは真実です。あなた方は素晴らしい国民です。国から感謝と賞賛を申し上げます。」
-終わり-